6月27日8時34分配信 フジサンケイ ビジネスアイ
インターネット専業証券の業界再編の動きが活発化してきた。三菱UFJフィナンシャル・グループによる松井証券への資本参加交渉が大詰めを迎えているほか、最大手のSBIイー・トレード証券は対面営業を行う同じグループのSBI証券と今年10月に合併する。“倍々ゲーム”で成長してきたネット証券だが、口座数の伸びが鈍化し、手数料の引き下げ競争が一段と激化するなか、単独での生き残りは一段と困難になってきた。
三菱UFJは松井の発行済み株式総数の15%以上を取得し連結対象企業にする方向で交渉を進めている。三菱UFJ傘下のカブドットコム証券と合わせると個人株式委託売買代金に占めるシェアでは、楽天証券を抜き、SBIイー・トレードに次いでネット専業で2位の勢力になる。
イー・トレードもSBIホールディングスの完全子会社であるSBI証券と合併する。営業拠点を持つ総合証券に衣替えし、ネットだけでは取り込むことができない富裕層への営業を強化するのが狙いだ。
日本証券業協会によると2006年度末のネット株取引の口座数は前年度末比18・8%増の1188万件となったが、伸び率は前年度の44・1%から大幅に鈍化した。07年3月期決算でも、ネットでの取引が多い新興企業向け市場の低迷や株式委託手数料競争の引き下げ競争の激化で、専業大手5社は軒並み2けた減益に見舞われた。
草分け的な存在である松井証券は、1918(大正7)年に個人商店として東京・日本橋に創業。オーナー一族が株式の大半を握る同族経営スタイルを続け、巨大資本にくみしない独立精神に基づく迅速な意思決定で証券業界でも独自の存在感を発揮してきた。
4代目となる松井道夫社長は87年に日本郵船から義理の父が経営する松井証券に入社、95年に社長に就任。当時横並びだった各種手数料を引き下げるなど業界の常識にとらわれない改革を断行し。98年にはいち早くネット取引へ転身し、対面営業一辺倒だった証券会社のあり方も変え、現在でも「証券業界の風雲児」など、その呼び声は高い。
ただ、相次ぐ大手証券の参入やネット専業他社の追随が激しさを増すなか、先行メリットも薄らいできている。
実際、07年3月期は手数料競争で出遅れたことが響き、最終利益が前期比34・9%減も大幅減益となり、かつての勢いをなくし、精彩を欠いているのが実情。
松井社長は、利益重視を掲げ、「もっともっと会社を小さくしていく」というのが持論。ただ、スピード経営では強みを発揮できるが、顧客ニーズに沿った新たな商品・サービスの開発や営業力では限界がある。
三菱UFJという“大資本”を受け入れる方向となったのも、従来の経営戦略の転換が背景にあるとみられる。時代をリードしてきた松井の苦境は、ネット証券が大きな曲がり角にさしかかっていることの表れといえそうだ。(
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